営農指導業務の職員間の情報共有による連携が必要

農家への支援と新規就農者への一貫した支援を行っていきたい

経営改善のための指導・アドバイスを適切なタイミングで実施したい

農業従事者・JAに共通する課題は、
「いかに農家の所得をあげていくか」

 JAうつのみやは1998年、栃木県宇都宮市と周辺の計1市4町(宇河地区)に所在していた5つのJAが合併して誕生。

 JAうつのみやでは、組合員の営農全般の活動を支援・指導し、その改善を図っていく営農部、そのための資材調達などを扱う経済部、JAバンクをはじめ預貯金を扱う金融部、JA共済などを扱う共済部の4つの部署に大別され、総合農協として農家・生産者の支援を行っている。

 どの農協にも共通したことですが、JAうつのみやが取り組むべき課題は、「生産者とともに安心・安全な農作物を消費者のもとに届けていくかはもちろんのこと、結局のところ農家の所得をいかに上げていくか」と営農部営農企画課課長・矢田部匡広氏は語る。

 この課題の解決に向けて、JAうつのみやでは平成29年度に「営農振興・担い手育成積立金」という制度を創設。

 新規に就農する人をサポートしたり、園芸ハウスなど園芸施設資材の導入費を補助したり、行政上の補助に上乗せする補助制度を設けた。

営農部営農企画課の矢田部課長

課題解決に向けた各種自己改革の実践

 JAうつのみやの園芸品目の生産者はイチゴの生産者が最も多く、一方、農地面積で見ると約9割が田んぼ。つまり、基幹作物は水稲であり、そのうえでイチゴをはじめとした施設や露地園芸の特産物があるという就農構成になっている。

 「特に若い方や新たに就農される方の8割がイチゴ、アスパラなどの施設園芸に就かれています」(矢田部氏)。

 こうした新規就農者に対してJAうつのみやは、金銭的な支援とは別に、「3年後の目標を立てていただいて、いわゆる伴走型で軌道に乗るように営農のアドバイスなどのお手伝いをしています」(矢田部氏)。

 このような日々の取り組みも含めて、JAうつのみやでは「自己改革の実践」として、JAうつのみやと組合員が協同し、「農業者の所得拡大」「農業生産の拡大」に向けた次のような自己改革の挑戦を続けている。

無料職業紹介事業による労働力支援
 農家・家族従事者の高齢化は農協にとっても大きな課題である。その課題に対して、農家の求人情報をウェブで発信し、応募された人を農家に紹介するマッチング事業を行っている。

集落営農組織の組織化と法人化
 高齢化は個々の農家はもちろんのこと、その農家集落、地域農業においても大きな課題となっている。そこで、地域の実情に応じて新たな集落営農の組織化を図り、実情に応じて法人化の支援も進めている。

「オールとちぎ」販売体制の強化
 生産面だけでなく、販売面では「オールとちぎ」販売体制の強化として、県内他地域の農協とも協力して契約取引などによる販売を強化。また、地域量販店内のインショップ事業にも積極的に取り組んでいる。

 このほか2020年からは、農家の経営を金融面で支援し強化するために「農業融資専任担当者」を配置。営農相談員との連携を強化し、資金面でのバックアップも積極的に進めている。

 「全体としてはJAうつのみやとしても地域の活性化に貢献していきたい。営農経済センターなどの出先事務所との連携した農業体験を通じた食育などの地域活動にも取り組んでいます」と矢田部氏は語る。

『戦略営農Navi』を導入

地域農業を支える生産者に指導を行う相談員

 JAうつのみやでは、JAと農家が協同して自己改革を実践していくなかで、2019年7月に『戦略営農Navi』を導入。

 導入前に使用していたシステムでいくつかの課題が浮き彫りになっていた。特に情報共有面で使ってきた管理システムが日報レベルで、十分な活用ができなかったことが課題として挙がっていた。

 農家を支援するにあたっては、どんなことが課題なのか、その課題解決のために乗り越えるべきことは何かといったことを職員内の一人ひとり、また課員全体で逐次、報告・連絡を行い、情報共有して課題解決の方法を検討・実行することが欠かせない。

 これまで使ってきたシステムは部下から上司への日報を書き込む程度にしか活用できず、営農支援をより強化していくには物足りなさ、もどかしさを感じていたようだ。

 たとえば、JAうつのみやの営農指導では、内部で研修会を開き、そのスキルを実践して指導していくスタイルをとることも多々ある。

 その営農指導の際、『戦略営農Navi』では単に指導内容と結果の数値だけが情報として蓄積されるのではなく、指導の過程で見えてきた課題や解決策などの内容情報が蓄積され、共有されていく。

 農作物は作物によって、また年によって「今、どの生育ステージにあるか」が変動するので、どんな対応をすべきか、という進捗管理も重要。通常は作付け状況などに応じて四半期ごとに確認することが多いのだが、それも『戦略営農Navi』では四半期ごとに見るのではなく、月次・週次など随時、状況を確認していくことができる。

 担当者だけでなく、常に作付けの現場に携わっているわけではない同じ課内の他の職員、また、上司も確認できることがメリットだ。

営農支援情報の見える化を実現

 『戦略営農Navi』のメリットは、「一言でいうと営農支援情報の見える化ができるということです」と営農部営農企画課営農指導係長の手塚仁氏は語る。

 『戦略営農Navi』を活用すれば、営農相談員の日報を毎朝見て、その生産者と生産物が今どのような状況にあるのかを確認し、必要に応じて、たとえば園芸課とクラウドで共有でき、別の観点からの指導内容を共有しつつ指導することもできる。その共有情報が蓄積されていくのである。

 『戦略営農Navi』のアカウント数は全体で30ユーザのうち営農課と関係各課で29名が保有し、1ユーザが農業融資選任担当者とのこと。

 農業融資の担当者も営農課と関係各課によって蓄積された情報を共有できれば、どこに、どのような融資をはじめ金銭的支援を行えばよいかが明確にわかる。それが、より的確な資金面のバックアップにつながっていくのである。

営農部営農企画課 手塚係長

一元管理により、地域内に点在する
出先でもスピーディに対応

 『戦略営農Navi』によって農家情報の一元管理が可能になり、「職員からもスピーディに対応できるといった評価を得ていますね」と矢田部氏は語る。

 営農課と関係各課といっても、本社機能がある本所に全員が在籍しているわけではない。園芸課は離れた建物にあり、5つのJAが合併したこともあって13の支所・出張所があり、さらに営農経済センターという事業所も管内に8ヶ所ある。農家情報を一元管理できていれば、場所的に離れていても農家情報を共有し、営農指導などに関する支援もスピーディに対応できる。

 単純に言って、電話での確認を繰り返したり書類を何度も送達したりするといったこともなくなり、担当エリアの変更も含めて人事異動があったときの業務引き継ぎもスピーディにできる。JAうつのみやも同様ですが、人事異動が多い組織にとって、この点は大きなメリットだ。

 『戦略営農Navi』で管理しているのは、ただの数値情報ではありません。詰まるところ「農家の課題」そのものだ。そのため、「農家情報も一元管理するに足る蓄積量に増やすとともに、その課題を解決できるスキルを職員が高めていくことが欠かせません」と矢田部氏は語る。

 広く日本全体で見ると、人口が減少すれば農協職員数も減っている。各JAにとっては担当エリアが広域化するだろう。そのなかで、営農、経済、金融、共済の各セクションの垣根を超えた連携対応がより求められる。

 その将来像において、情報の一元管理と共有、さらにその情報活用の意義がますます高まっていく。2020年から農業融資選任担当者もユーザとなっていますが、それは『戦略営農Navi』をどのように、より有効活用できるか、JAうつのみやにとってのICT化の試金石といえるだろう。

 今後、『戦略営農Navi』の活用をどう発展進化させていくか。組合員の取引高に応じた支援への活用もあり得るでしょうし、重点農家の絆の強化もあり得る。もちろん、新規就農者の拡大をめざした展開もあり得る。さまざまな展開手法が考えられるが、JAうつのみやでは、県内外の他地域のJAとの連携・調整も図りつつ、的を絞って取り組んでいきたいと考えている